これは、息子(KAT)が高等部1年の時に起きた事件です。
当時の母の感情もそのまま伝えたいと思い、ブログ記事をそのままにしてありますが、JRの職員の皆さんには、その時もその後も大変お世話になり、感謝していることを最初にお伝えいたします。
夕方、KATの携帯から電話が入りました。パニックになっている様子で、すぐに側にいる誰かにかわりました。
K駅の守衛の方で、KATに守衛室に来てもらっているとのこと。「駅のホームにいる“案内人”という女性職員の帽子を取ろうとしたり、体を触ったりという行為が、先日から何度かあり、今日もそれが見られたので、声をかけて、こちらに連れて来た。今後、このような行為がないように、家の方でもしっかり話して欲しい。お母さんの連絡先を教えて欲しい。」
電話の向こうでは、いつもの時間の電車に乗れなくなると、KATが益々パニックになっている様子。「次の電車になっても良いですか?」と言う守衛さんに、「いつもの電車に乗れないと、もっとパニックになってしまうので、できればその電車に乗せてやってください」と伝えました。
KATにかわってもらい、通学カバンの中に入れてある、“登下校中のカード”を渡すように言い、そのコピーを取ってもらって、とりあえず電車に乗せてもらいました。
数分後、改めてかかってきた電話。最初に出た守衛さんは、落ち着かないKATと一緒に電車に乗り込んでくれたそうです。そして次にかわったのは、鉄道警察の方。「今度このような行為があった場合、警察に連行することになる。今回の事も報告書を提出しなければいけない。以前にも警察のやっかいになったことがあるか」・・・かなりキツイことを言われ、嫌なことを聞かれました。最後に、KATの障碍のことを話し、パニックになっている時の対応の仕方を伝えました。
KATが帰ってきて、K駅で何があったのかと聴きましたが、出てくるのは、守衛さんの名前とその人が言ったことと、その人が母と電話で話したということだけ・・・自分が何をして注意されたのかは、全く出てこないばかりか、「悪いことはしていません」と言いました。そう、自分が守衛室に連れて行かれた理由がわかっていないのです。
KATに鉄道警察から電話があったと言いました。どういう悪い事をしたのかを話しました。今度そんな事をしたら逮捕されると伝えました。
以前の電車の中での女子高生への話しかけも、全くなくなった訳ではないうちに、また起こった事態。可哀想だとは思ったけれど、これは全てを禁止するしかないと判断しました。
*女の人には話しかけない(女子高生を含む)
*体をさわらない(腕や肩もダメ)
*帽子を取らない(そんなことをする意味がわからない)
この約束を守れなかったら、もう電車には乗れなくなるんだよ。そうすると、自立通学はできなくなって、学校にも行けなくなるよ。どうしたら良いのかな?・・・KATに考えさせました。
*ホームの上で2列に並んで待つ。
*ウロウロしないですわる。
*静かにする。(Vol.2)
と自分で書きました。そうだね・・・何もしなければ、問題にはならないはずだよね。
いつものようにKATと二人で夕食を食べていると、悲しくて悲しくて、涙が止まらなくなりました。「何が悪くて、何が間違っていたんだろう。自立通学は無茶だったんだろうか。KATは一般社会では生きていけないのかもしれない。」
夜、仕事から帰ったお父さんに報告しました。「いきなり警察とは、対応がちょっと乱暴過ぎるんじゃないか」と憤慨。「もう一人で通学させれない」と言い出しました。
後からわかったことですが、その“案内人”という女性は、数ヶ月からK駅のホームにいるそうです。ちょっと可愛らしい制服を着て立っている“案内人”は、ホームの乗客に向かって、電車の発車時刻や次の電車の案内などを、随時、誰に聞かれる訳でもなく話しています。そして、多分ですが、これまではKATが話しかけたら返事をしてくれていたんだと思います。でも、それがしつこすぎるので、無視するようになったんだと思います。KATにとっては、これまで相手をしてくれていた人が突然相手をしてくれなくなって、訳がわからなかったのでしょう。
今後の対応は、また学校とも相談してやっていこうと思います。
最後に親としての身勝手なことを言わせてもらえば・・・JRと言う公共の企業で、駅のホームと言ういろんな人が行きかう場所で、一般常識がきちんと伝わる相手ばかりではないことは当たり前なはずの、そういう仕事をしているわけだから、何かあった時に、すぐに連行して警察を呼ぶという対応しかできないであれば、そんなサービスやめちまえ!
2009/1/17
土・日をはさんで月曜日、KATの下校に合わせて、担任の先生とK駅で待ち合わせました。KATがやってきて、すぐに見つかったのですが、逃げるようにして改札に入っていきました。後を追って改札を通ると、私たちよりも先に、KATを追いかけているような人がいます。ホームに行くと、すでに電車が入っていて、KATの姿はありません。
私たちの目的は、KATの様子を見ることはもちろん、例の“案内人”の確認をしたかったので、発車時間までのしばらくの間、ホームで見ていました。最初はいなかった案内人が現れたのですが、KATが乗っていた電車の車両の前で、母と先生の様子が気になって、電車から降りたり乗ったりしているKATが、そうやって動くたびに、付けているインカムで何やら話しています。ホームを見渡すと、車両の前のエレベーターに隠れるようにして、改札からKATを追いかけていた“人”がいて、案内人とインカムで話しているようです。
先生と「あの人たち、絶対KATを見てますよね!」と話し、私はエレベーターの陰にいる人のもとに行きました。その人は鉄道警察の方でした。自己紹介して、金曜日のことを謝罪し、その上で、「話し合いの場を持ちたい」とお願いしました。ところが、鉄道警察の人から拒否されました。
その人からは、KATがやってしまった“犯罪行為”の説明をされ、そういう必要があるようならこちらから連絡すると言われました。
そういう必要・・・またもう一度“犯罪行為”をしたらと言うこと?
その時は警察に連行すると言ったのでは!?
そうなってからでは遅いから、障碍を理解してもらって、二度と起こらないような対応をして欲しいから、話し合いたいんです!
私はもう電車に乗らなければいけなかったので、とりあえず、「そういう行為があった時は、相手の当事者から、はっきりと「やめてください」と伝えて欲しい。最初の段階でそれを曖昧にすると、行動がエスカレートしてしまう。」と話してきました。
その後、担任の先生からもう一度、学校側としても話し合いたいとお願いしても、「その必要はない。学校は出てこなくていい。何かあったら家に連絡する。」と言って、受け合ってもらえなかったそうです。
警察は、犯罪を未然に防ぐ為にあるのか?
犯罪者を捕まえる為にあるのか?
発達障碍者支援法で定められた『第4条国民の責務』
国民は、発達障碍者の福祉について理解を深めるとともに、社会連帯の理念に基づき、発達障碍者が社会経済活動に参加しようとする努力に対し、協力するように努めなければならない。
国民を守るべき警察は、この法律を知っているのか。。。
昨日もKATの下校に合わせてK駅まで行き、同じ電車に乗って帰ってきました。ホームでは電車が来るまでイスに座って待ち、電車が入ったらすぐに乗り込み、母とは少し離れた座席に座り、乗り込んでくる女子高生たちを見てソワソワしながらも、立ち上がることなく、ずっと座って最寄駅まで着きました。いつもこんな風に乗ってくれたら何の問題もありません。 「今日のKATはとっても良かったよ。毎日そうしてくれると良いな。」・・・KATを信じよう。
2009/1/21
先週、3回も下校の電車が母と一緒だったことで、かなりご立腹のKATでしたが、それは自分のやったことの代償だから・・・。
この一週間は、それに関することで、いろんな動きがあり、今週、JRと警察と学校と母とで話し合いの場が持てることになり、それに向けての支援ツールとかを準備したりして、何か大きな進展があることを期待しています。
私がブログに記事を書いたことや、信頼できる友人たちに話したことで、私よりも怒ってくれた方や、一緒に悲しんでくれた方、心配して何度も連絡をくれた方・・・本当に嬉しかったです。
学校の先生方も積極的に動いてくださったり、KATには心強いサポーターがいっぱいいて、この難しい局面を、何とか乗り切れそうです。
大変な事態でしたが、“今”起こったことが幸運だったと思い、KATにも良くない行動は改めてもらい、社会にも理解して、支援してもらえるように、凹んだ分をプラスに変えていきたいと思います。
それにしても本当に疲れました。こういうエネルギーをこれまでも何度か使いましたが、障碍児を持った親の宿命だとしても、こういう事が一番疲れます。
2009/1/26
先々週の金曜日に起こった大事件!それについての話し合いの場を持つことができました。
学校の先生が2名、JRから各駅長さんやサービス担当者、警備会社の方、鉄道警察官など、総勢11名の会議となりました。たった一人の自閉症の子がやってしまった行動が、こんなに大袈裟なことになってしまって、正直冷や汗ものです。
きっと何年も何十年も利用することになるだろうJRに、KATのことを知ってもらうこと、理解してもらうことは、これから先の生活の中で、とても大きな力になります。サポートシートをお渡しして、たくさんお話させていただきました。
対応の仕方など、駅の職員の方全員に周知していただけるとのことです。万全のサポート体制で見守っていただくことができそうです。本当に良かった・・・やっと少し安心できました。
最寄駅の駅長さんからは、具体的に「こんな時はどうしたら良いのか?」など質問していただき、今現在心配している電車の中での女子高生への声かけや、駅の待合室での様子などを伝えて、「さりげない声かけをして欲しい」とお願いしました。
今回、サポートシートに書き加えた“母からのメッセージ”
「KATは“人”が大好きです。社会性やコミュニケーションに障碍があるため、決して上手ではありませんが、人との関わりを楽しんでいます。そして、人との関わりの中で、たくさんのことを学んでいます。好ましくない行動があった時は、明確な態度で注意してください。また、見かけた時に声をかけていただければ、本人の安全につながるだけでなく、行動の抑制力も高まります。ご迷惑をおかけすることも多いと思いますが、社会の力をお借りして、KATを育てていきたいと願っています。よろしくお願いします。」
先週作って、今週初めから持たせている支援ツール
ここにも書いたように、直後はただただ悲しくて、そしてショックで、もう自立通学はさせられないのか・・・と思いました。これまでも、もう少し事態は小さいとは言え、何度もこんな事があり、その度打ちのめされ、苦しみ、それでも立ち上がって進んで来ました。
KATが頑張って、頑張って、ここまでやって来たけど、、、
どれだけ頑張っても、社会の理解がなければ、何の意味もなくなるのなら、これ以上、我慢させたり、頑張らせる必要があるんだろうか?
無理に自立させなくても、諦めてそれなりの生活をした方が、トラブルもなく、快適なんじゃないだろうか?
社会の理解を求める為に、KATを矢面に立たせて、これ以上傷つく必要がどこにあるんだろうか?
そんな事を何度も考えました。
でも、そしたらこれまでやってきた事は全部無駄になる。応援してくれる人がたくさんいる。力になって一緒に動いてくれる人たちがいる。そして何より、KATがこのまま続けることを望んでいる。何としてでも、先に進むしかないと思いました。
今日の話し合いで、KATだけではなく、自閉症・知的障碍の理解や、対応の仕方を具体的に伝えることができました。もしかしたら、こういう機会をKATが作ってくれたのかも・・・そんな風にさえ思える位の成果があったと思います。
「雨降って地固まる」・・・話し合いが終わって教頭先生が言いました。本当に、本当に、そう思います。でも・・・できることなら、今度の雨は、我が家にではなく、別の所に降って欲しい・・・そう願わずにはいられません。
2009/1/29